減価償却費の例

まず減価償却費から。商業簿記では、

 減価償却費  XXXX / 減価償却累計額 XXXX

となり、減価償却累計額は貸借対照表上で借方に記載される。そして減価償却の対象となった固定資産は取得価額で記載される。*1つまり、固定資産の簿価は取得価額 - 累計額で求められる。貸借対照表には貸借対照表日における固定資産の未費消と見積もっている価額が表示されていると。この処理が行われるのは決算整理でだ。

一方、工業簿記では固定資産の減価償却費は原価算入されるので、まず予算を立てる期首の段階でこんな感じに仕訳が行われる。*2

 減価償却費  XXXX / 機械や建物の簿価  XXXX

つまり減価償却累計額という科目は、仮にこの仕訳が切られて決算日になったとしても貸借対照表上には絶対に表示されない。では、どうなるか?

結論から言えば、減価償却費は間接経費に計上され製造間接費に振り替えられる。

  間接経費  XXXX / 減価償却費  XXXX
  製造間接費  XXXX / 間接経費  XXXX

そして仕掛品へ振り替えられ、最終的には製品となる。

  仕掛品  XXXX / 製造間接費  XXXX
  製品  XXXX / 仕掛品  XXXX

販売したら売上原価になる。

  売掛金  XXXX / 売上  XXXX
  売上原価  XXXX / 製品  XXXX

工業簿記では製品一個一個にに減価償却費がこまかく割り振られて、それを売り上げた時点でその金額を「取戻して」いる。*3 工業簿記のほうが商業簿記と比べて製品に細かく配分して行って、それを販売した時点で細かく細かく減価償却費を取戻している。製品の単位原価に細かく上乗せしているイメージだ。

一方商業簿記は、てきとーに見積もって期末にがっちり差っぴく。なぜなら商品売買業の場合、工場などの製造部門は存在しないので単に損益計算書上で販売費及び一般管理費に計上することが決められているからである。

*1:別の記載方法(直接差し引いて表示する方法)もあるが。

*2:実際には仕訳は切られず、年間の予算として減価償却費XXXX円などと表示されるだけだが。

*3:したがって、期末に製品が在庫として存在する場合には、その原価の一部に減価償却費が入っている。つまり貸借対照表の機械(や建物)の価額に在庫分の減価償却費を足した金額が機械(や建物)の簿価になる。